なんか無駄に疲れている虎氷女です。
昨日、メインのパソコンのウイルス対策はしたのですが、
あとの2台がまだなことに気づき、とりあえず頻回に使ってるほうの
PCさんのウイルスバスターをかけてみました。
ぶっちゃけ、ウイルスがいるのはわかってたので(苦笑)
さっそく削除&隔離してもらいました。
ふー、これでひと安心な、なはず。
さって、続きはまたも御題です。
まだ導入編なのであれですが、次回からはも少し真相(?)に
迫れる……はず。
2 血染め雪
「雪、か……」
見世の窓の外。
ちらちらと舞う白いそれを認め、アスランは無意識に顔を逸らしていた。
「珍しいね。君が外の景色を気に掛けるの」
しかし、顔を逸らした先には幼馴染の女顔が待ち構えていて、
つい顔をしかめてしまう。
最も、顔を顰めたのはそれだけの理由ではなかったが。
「いい加減、服を着ろ」
剥き出しの裸体に対し、目のやり場に困る。
というより、ただ悔しい思いをさせられるのが嫌だった。
軍人だから当たり前だが、キラの体つきはがっしりとした筋肉がついていて、
まるで女の様に白く柔らかい自分の肌に劣等感を刺激させられる。
だが、それよりもなによりも。
本当は、自分とて軍人になっていたはず、と
そんな昔の叶わなかった幻想の傷を抉られるのがたまらなく嫌だった。
それを隠すように憮然と言えば、キラはくすりと喉の奥で笑うような声を発した。
「今更照れてるの?」
「そういう問題じゃない」
ますます顔を顰めたアスランは、ふいと彼から顔を背けてもう一度窓の外の雪を眺めた。
ちらちらと舞う雪。
……正直、雪は嫌いだ。
嫌なことを思い出す。
でも、この雪の冷たさよりも、もっとずっと……目の前の男が嫌だった。
「ほら、冷えるよ」
優しさを装って、背後から抱きしめられる。
素肌同士が触れ合って、熱が直に伝わる。
それが限りなく厭わしい。
何故、キラなのか。
神に恨み言をひとつ言えるというのなら、
真っ先にこの男を、再度自分の前に寄越したことを訴えるだろう。
もう、男娼として生きていくことには諦めている。
けれど、この男に買われるのだけは我慢ならなかった。
かつての優しい思い出が、音を立てて崩れていく。
「やめろ。俺から離れろ」
「なんで? 寒いの嫌いでしょ」
キラに耳元でくすくすと笑われて、ざっと肌が粟立つ。
きっと態とやっているに違いない。
そう思えば苛立たしさが更に増した。
「お前に触れられるよりはマシだ」
顔を見ぬまま強く言い切る。
けれど言った傍から彼の腕は強く、掻き抱くように力を込められた。
「ねぇ……それって僕以外の男だったらいいってこと?」
「っ!」
抑揚のない声を耳元に叩き込まれる。
ついでとばかり耳朶を食まれて、勝手に腰が揺れてしまった。
そんなアスランの反応を嘲笑うかのように、キラはその細い腰を掴んでくる。
「ああ、それともアスランは色を売るより、人殺しがしたいんだっけ?」
「言うなっ!」
毒の様に甘く囁かれ、アスランは反射的に怒鳴っていた。
「言うな……言うなっ!」
こんな雪の日には、声が、耳にまとわりついて離れない。
――お前が殺した。
――お前が、あの人を。
――あんなにもお前のことを大切にしていたのに。
――――あたり一面に、赤い雪が広がる。
「やめろっ!」
それは尚も肌を舐るキラに対してだったのか、ありもしない幻聴にだったのか。
それでも声はやまないし、キラの手も止まらない。
「可哀想にね」
そう言った男の顔はつらそうに歪んでいたけれど、アスランには見えていない。
ただ、あの日以来赤くなってしまった雪の、目に痛いほどの白さを懸命に思い出そうとしていた。